next up previous
: 5.4 数式モードにおけるスペースの制御 : 5. 数式の組版 : 5.2 数式モードにおけるグループ化

5.3 数式の書き方

この節では,数式を出力する上で使用するコマンドについて 説明していきます. 使用できる数学記号については, [*]ページの第5.10節を参照して下さい.

ギリシャ文字の小文字は, \alpha\beta\gamma,...のように, また大文字は,\Gamma\Delta,...のように 入力します5.2


\begin{example}
$\lambda,\xi,\pi,\mu,\Phi,\Omega$\end{example}

上付きと下付きの添字 は, それぞれ^_を用います.


\begin{example}
$a_{1}$\ \qquad $x^{2}$\ \qquad
$e^{-\alpha t}$\ \qquad
$a^{3}_{ij}$\\
$e^{x^2} \neq {e^x}^2$\end{example}

平方根を出力するには, \sqrtコマンドを使用します. $n$乗根を出力するには,オプション引数を 用いて\sqrt[$n$]のようにします. 平方根の記号の大きさは,LATEXが自動的に決定してくれます. もし根号記号のみが必要になれば,\surdコマンドを 使用して下さい.


\begin{example}
$\sqrt{x}$\ \qquad
$\sqrt{ x^{2}+\sqrt{y} }$\qquad $\sqrt[3]{2}$\\ [3pt]
$\surd[x^2 + y^2]$\end{example}

\overlineコマンドと\underlineコマンドは, それぞれ数式の上と下に水平な直線を引くコマンドです.


\begin{example}
$\overline{m+n}$\end{example}

\overbraceコマンドと\underbraceコマンドは, 数式を囲むような水平なブレース(中括弧)を それぞれ数式の上と下に書くコマンドです.


\begin{example}
$\underbrace{ a+b+\cdots+z }_{26}$\end{example}

変数の上に小さな矢印やチルダのような 数式アクセント記号を付けるには, [*]ページの表5.1に 示すようなコマンドを使用します. 数文字を覆うような幅広の山形記号やチルダを出力するには, \widetildeコマンドや\widehatコマンドを使用します. '記号は, プライム記号を出力します.


\begin{example}
\begin{displaymath}
y=x^{2}\qquad y'=2x\qquad y''=2
\end{displaymath}\end{example}

ベクトルは,変数の上部に小さな 矢印記号を添えることで表します. このためのコマンドが \vecコマンドです. 点$A$から点$B$までのベクトルを出力するために, \overrightarrow\overleftarrowという 二つのコマンドがあります.


\begin{example}
\begin{displaymath}
\vec a\quad\overrightarrow{AB}
\end{displaymath}\end{example}

logなどの関数名は,変数を表すイタリック体ではなく 立体で表示されるのが普通です. そこでLATEXでは,主要なほとんどの関数名を出力するために 以下のコマンドが用意されています.


\arccos \cos \csc \exp \ker \limsup \min \sinh
\arcsin \cosh \deg \gcd \lg \ln \Pr \sup
\arctan \cot \det \hom \lim \log \sec \tan
\arg \coth \dim \inf \liminf \max \sin \tanh


\begin{example}
\begin{displaymath}\lim_{x \rightarrow 0}
\frac{\sin x}{x}=1\end{displaymath}\end{example}

剰余関数には, 二項演算子``$a \bmod b$''を表す \bmodと `` $x\equiv a \pmod{b}$''の形式で出力する \pmodの 二つのコマンドがあります.

分数を出力するには, \frac{...}{...}コマンドを使用します. $1/2$の出力形式も,`分母',`分子'の桁数が少ない場合に 見栄えがよいのでよく使用されます.


\begin{example}
$1\frac{1}{2}$~hours
\begin{displaymath}
\frac{ x^{2} }{ k+1 }\qquad
x^{ \frac{2}{k+1} }\qquad
x^{ 1/2 }
\end{displaymath}\end{example}

二項係数や同じように横線のない分数を出力するには, {... \choose ...} コマンド, {... \atop ...} コマンドを使用します. 後者のコマンドは,括弧が出力されないだけで 前者のコマンドと同じような出力になります. (amsmathパッケージでは,これらの 古い形式のコマンドを使用することをはっきりと禁止しており, これらのコマンドは \binomコマンドと \genfracコマンド に置き換えられています. 後者は様々な分数構造を定義できるコマンドになっています. 例えば, \newcommand{\newatop}[2]{\genfrac{}{}{0pt}{1}{#1}{#2}}の 定義で,\atopコマンドと同じ構造を出力することができます.)


\begin{example}
\begin{displaymath}
{n \choose k}\qquad {x \atop y+2}
\end{displaymath}\end{example}

関係項演算子などでは,演算子の上に記号などを 重ねて出力することがよくあります. \stackrelコマンドは,二番目の引数を 通常の位置に出力し,その上部に上付き添字の文字サイズで 最初の引数で与えられた記号を出力します.


\begin{example}
\begin{displaymath}
\int f_N(x) \stackrel{!}{=} 1
\end{displaymath}\end{example}

積分記号\intコマンド, 総和記号\sumコマンド, また積記号\prodコマンドで 出力することができます. この場合,下限,上限は下付き添字,上付き添字を 出力するためのコマンド^_を用います5.3


\begin{example}
\begin{displaymath}
\sum_{i=1}^{n} \qquad
\int_{0}^{\frac{\pi}{2}} \qquad
\prod_\epsilon
\end{displaymath}\end{example}

TEXには,括弧や その他の区切り記号を表すために, 様々なコマンドが用意されています (例えば, $[\;\langle\;\Vert\;\updownarrow$など). パーレン(( ):括弧)やブラケット([ ]:角括弧)は 対応するキーを直接入力することで, ブレース({ }:中括弧)は\{ \} で, またその他の区切り記号はそれぞれのコマンド (例えば,\updownarrowなど)を入力することで 出力できます. 出力できる区切り記号については, [*]ページの表5.8を 参照して下さい.


\begin{example}
\begin{displaymath}
{a,b,c}\neq\{a,b,c\}
\end{displaymath}\end{example}

開き区切り記号の前に \leftコマンドを, また閉じ区切り記号の前に \rightコマンドを置けば, TEXは数式の高さに合わせた大きさの区切り記号を 自動で打ち出します. ただし,\leftコマンドはすべて \rightと 対になっていなければなりません. また区切り記号のサイズが正しく決められるのは, 同じ行で対の区切り記号が出力される場合のみです. もし右側の区切り記号が必要ない場合には, 目に見えない区切り記号である`\right.'を 使うことになります5.4


\begin{example}
\begin{displaymath}
1 + \left( \frac{1}{ 1-x^{2} }
\right) ^3
\end{displaymath}\end{example}

場合によっては,区切り記号の正しい大きさを LATEXに指示する必要があります. そのためのコマンドに,\big\Big\bigg\Biggがあります. これらのコマンドは区切り記号を表すコマンドの前に 書きます5.5


\begin{example}
$\Big( (x+1) (x-1) \Big) ^{2}$\\
$\big(\Big(\bigg(\Bigg($\quad
...
...\Big\}\bigg\}\Bigg\}$\quad
$\big\Vert\Big\Vert\bigg\Vert\Bigg\Vert$\end{example}

数式中で三点リーダを 出力するには,いくつかのコマンドが使用できます. \ldotsコマンドはベースライン上に, また \cdotsコマンドは中央の高さに それぞれ水平方向に点を三つ描きます. さらに垂直方向には \vdotsコマンド, 斜め方向のドットを 出力するには \ddotsコマンドがあります. 5.5節に別の例があります.


\begin{example}
\begin{displaymath}
x_{1},\ldots,x_{n} \qquad
x_{1}+\cdots+x_{n}
\end{displaymath}\end{example}


next up previous
: 5.4 数式モードにおけるスペースの制御 : 5. 数式の組版 : 5.2 数式モードにおけるグループ化
Hiroyuki Ohsaki (oosaki@ics.es.osaka-u.ac.jp)