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3.2 基本的事項

3.2.1 執筆者,本のデザイナ,組版者

本などを出版する際,執筆者はタイプした印刷用の原稿を 出版社に渡します. そして,出版社のデザイナが本のレイアウト(文章幅,フォント, 見出しの上下のスペース量などなど)を決定します. デザイナはレイアウトの指示を原稿に書き込み, 印刷工に渡します. この指示に従って本が組版されます.

本のデザイナは,原稿執筆中に執筆者が意図していたことを 理解し,プロの知識に基づいて原稿に書かれている内容から 章見出し,引用文献,例題,数式などのレイアウトを決定します.

LATEXを使用して組版を行う場合,LATEXが本のデザイナ, TEXが組版工としての役割を分担します. しかし,LATEXは単なるプログラムでしかないため, LATEXが解釈できるようにするために指示を与えなければ なりません. つまり執筆者は,作成している文書中に論理的な構造を 明示した情報もあわせて与えなければならないのです. この情報というのが,``LATEXコマンド''として文書中に 書き込まれるものなのです.

このLATEXの方法は,MS Wordとか Corel WordPerfectといった最近のワープロの手法である WYSIWYG3.1とは全く異なっています. これらのアプリケーションソフトでは,執筆者はコンピュータに 文書を入力しながら直接文書のレイアウトを決定していきます. このようにして,最終的に印刷されたものがどのようになるかを コンピュータ画面上で確かめることができます.

LATEXを使うと,文書を入力している際には通常, 最終的な出力結果を確認することはとても難しくなります. しかし,LATEXでファイルを処理(組版)した後であれば, 最終的な出力結果をコンピュータの画面上に表示することで 確かめることができます. つまり,実際にプリンタから文書を出力する前に修正を 行うことができるのです.

3.2.2 レイアウトデザイン

レイアウトのデザインは,技能です. 組版知識の未熟な執筆者は,よく重大な体裁間違いを起こします. それは,「文書が芸術的にすばらしく見えるのは, うまくデザインされているからだ」というように,本のデザインは たいてい美的感覚の問題だと思っているからです. しかし文書は読まれるべきものであり,美術館などに 飾られるものではありません. 読みやすさと理解しやすさは,その見栄えよりもずっとずっと 重要なのです. 例えば,

WYSIWYGシステムでは,見た目が良いだけで構造の ほとんどない,もしくはあっても矛盾した構造をもった文書を 作りがちです. しかしLATEXでは, 文書の論理的な構造を執筆者が明示する必要があるため, そういった間違った体裁になるのを防ぎ, 最も適したレイアウトを行うことができるのです.

3.2.3 よい利点と悪い点

WYSIWYGシステムに慣れた人がLATEXを使用している人に, 「いわゆるワープロと比べて LATEXの良い点, もしくは良くない点」を話題にすることがよくあります. そんな議論はたいてい手に余るので, 始まってしまったら低姿勢を保つのがベストでしょう. しかし,時にはそんな議論から逃れられなくなることも...


そこでLATEXに有利な情報をここに示しておきましょう. LATEXがワープロよりも優れている主な点は,以下の通りです.


LATEXには次のような欠点もあります. 私にはそんなにたくさんあるとは思えないのですが, 山と挙げる人もいるでしょうね ^_^;


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Hiroyuki Ohsaki (oosaki@ics.es.osaka-u.ac.jp)